【第2回】塾・スクール・習い事を営んでいる方のための確定申告

解説コラム

みなさん、こんにちは!メイプル会計事務所・南伸一公認会計士税理士事務所のみなみです。前回は、「塾・スクール・習い事を個人事業で営んでいる方のための確定申告 第1回」をお読みいただき、ありがとうございました。今回は第2回をお届けしたいと思います。

第2回目は、主に青色申告について説明します。なお、今回も塾・スクール・習い事を営んでいる個人事業主の方を対象とした内容となっております。法人の場合は、また別の機会で説明させて頂きます。

青色申告とは?

確定申告の種類(やり方)には、2つの方法があります。1つが白色申告でもう1つが青色申告です。

白色申告は簡易な方法での帳簿の作成が認められている方法であり、それに対して青色申告は基本的に複式簿記という記帳の正式なやり方で帳簿を作成しなければならない方法です。白色申告は帳簿の作成が簡単なため申告にあたり特典があまりありませんが、青色申告はきちんと帳簿を付けるため申告にあたり種々の特典が与えられています。

青色申告を行う場合は、定められた期限内(※1)に事前の届け出(青色申告承認申請書)を税務署に提出する必要があります。ですから、「青色申告承認申請書」を提出しなければ自動的に白色申告となります。

何もしなければ白色申告で、青色申告を行うためには事前の届け出が必要になるということは、白色申告のほうが基本的で、青色申告のほうが特殊なような印象を受けるかもしれませんが、白色申告よりも青色申告で行っている方のほうが圧倒的に多いです。その理由は、前述したように青色申告には、大きな特典があるからです。

塾・スクール・習い事を営んでいる方についても、青色申告を選ぶことをおススメします。なぜ、塾・スクール・習い事を営んでいる場合は青色申告が良いのか?について、以下、青色申告の特典に沿って、その理由を解説します。


※1

  1. 原則
    新たに青色申告の申請をする場合は、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。
  2. 新規開業した場合(その年の1月16日以後に新規に事業を開始した場合)
    事業を開始した日から2か月以内に「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります

青色申告の特典とは?

青色申告の主な特典について、以下、列挙していきます。

1.青色申告特別控除

青色申告を行うと最大で65万円(※2)の青色申告特別控除を受けられます。税金そのものが65万円安くなるのではなく、所得を65万円減らすことが出来るということです。このシリーズの第1回目で所得税の計算は課税される所得金額に税率をかけて計算すると説明しました。ですから、所得を65万円減らすことができるということは、税率を20%とすると、

650,000円×20%=130,000円

だけ、税金を減らすことができるということです。13万円税金を減らせるということは、13万円だけ手元にお金が残るということです。個人の感じ方の違いもあるかもしれませんが、13万円も現金が手元に残るのは、とても大きな特典と言えると思います。

塾・スクール・習い事なら、ホワイトボードや机・椅子、あるいは、パソコンを買い替えて新しくすることもできますし、そのまま広告宣伝費に使えば大きな売上増につなげることもできます。

※2
青色申告特別控除の金額は、65万円、55万円、10万円の3種類があります。これらの違いは、記帳方法の正確性やe-Taxの利用の有無などにあります。

2.青色事業専従者給与の必要経費算入

所得税の計算の基本的な考え方によれば、配偶者等家族に支払った給料は必要経費とすることができないのですが、青色申告を行っている場合、配偶者等家族に支払った給与を経費に算入することができます(※3)。また算入できる金額も、事前に届出書に記載された金額の範囲内で労務の対価として適正な金額であれば、いくらでもOKということになっています。

例えば配偶者に年間100万円の給与を支払っていたとすると(税率は20%とします)、

1,000,000円×20%=200,000円

だけ、税金を減らすことができます。

塾・スクール・習い事の事業では、配偶者等の家族に仕事を手伝ってもらうことは多々あると思います。特に開業したばかりであれば教材の作成など、やることはたくさんあると思いますが、講師やスタッフを雇うには資金的にまだ早いという事情もあります。そんなときに配偶者等の家族に給与を支払って税金が安くなり、手元にお金が残るのであれば、経営上、大きなメリットになります。

※3
なお、青色事業専従者給与の必要経費算入ができるための要件もいろいろとありますので、詳細は国税庁のホームページなどでご確認下さい。

3.純損失の繰越し

基本的に所得税は1年ごとの利益(所得)に応じて、納税額を計算します。しかし青色申告を行っている場合、事業で赤字になった際の損失額を翌年以後3年間に渡って繰り越して、翌年以後の各年分の利益(所得)から控除することができます。

例えば×1年において赤字が100万円発生したとします。税金は利益(所得)が出ていれば納める必要がありますが、赤字の場合は納める必要はありません。ですから1年目の所得税はゼロです。

そして、×2年において利益(所得)が80万円発生したとします。普通に考えれば、80万円の利益(所得)に税率を乗じて所得税の金額を計算するので(所得控除はなしとします)、税率5%とすると、

800,000円×5%=40,000円

の税金を納めることになります。

ですが、純損失の繰越しの適用を受けた場合、×1年の赤字100万円を翌年以後に繰り越すことができるので、×2年の利益(所得)80万円は相殺されゼロとなります。その結果、×2年においても税金を納める必要がなくなるわけです。

×1年の赤字100万円と×2年の利益(所得)80万円を相殺した結果、まだ20万円の損失が残っているので、この分は×3年や×4年に繰り越されて、×3年や×4年の税金も減らすことができます。

塾・スクール・習い事の事業においては、やはり開業後、1年、2年はなかなか利益が出ずに赤字というケースが多いです。このときに、

どうせ赤字なのだから納める税金はゼロだ!
そうであれば
青色申告でも白色申告でも変わらないので記帳が簡単な白色申告でいいや!

と思ってしまいがちです。たしかに赤字になってしまった1年目、2年目は税金ゼロで青色申告でも白色申告でも税金の納付額(ゼロ)は変わらないかもしれませんが、事業が軌道になって利益が出始める3年目、4年目になってきたときに、青色申告であれば損失の繰越しで税金を減らすことができますが、白色申告であれば3年目、4年目の利益(所得)に応じて税金を納める必要が出てくるのです。

事業が軌道に乗り始めて利益も出始めるということは、それだけ運転資金も増えていくので、少しでも多く手元に現金を残しておく必要があります。青色申告を利用して、うまく手元に現金を残していく工夫が大切だと思います。

さいごに

塾・スクール・習い事を営んでいる方のための確定申告 第2回は以上となります。今回は主に青色申告について解説させて頂きました。

確かに青色申告は白色申告に比べて記帳の手間暇や記帳するための簿記知識が必要となりますが、それを上回る特典があります。事業においてキャッシュはとても大事なので、青色申告を利用して上手に資金を残す工夫を心掛けて頂ければと思います。次回もまた、よろしくお願いします。

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